薬師成人様インタビュー

薬師成人様

2017年9月に行われた宮城全共(第11回全国和牛能力共進会 宮城大会)の第9区(去勢肥育牛)にて優等賞1席で農林水産大臣賞、購買者賞として最優秀枝肉賞を受賞されました、鹿児島県鹿屋市の薬師成人様。受賞後は、畜産専門各誌やテレビ番組の取材などが立て込んでおられ、お仕事でも大変ご多忙の中、快くインタビューに応じてくださいました。
「脂肪の量から質へ」と価値観の転換が起こっている中で、受賞牛は審査員から「今後和牛の目指す方向性を示す肉質」と最高の評価を獲得されました。そのような肥育牛を育てる秘訣の一端を伺うことができるでしょうか。インタビュー担当は、東亜薬品工業株式会社の井爪マネージャーです(※ 2017年10月に薬師様畜舎にてインタビュー)。

- 受賞牛「忠久福」のデータ -

22ヶ月齢/血統[父 忠久勝、母の父 安福久、母の母の父 美華忠]/枝重 495kg/ロース芯面積 97cm2/バラ厚9.2cm/皮下脂肪1.4cm/BMS(脂肪交雑)No. 12/BCS(肉色)No. 3/歩留基準値 80.7%/MUFA(一価不飽和脂肪酸)予測値 51.4%/枝単価 50,001円/kg/枝肉価格 24,750,495円(前回最高値から3,341円高)

【インタビュアー】:薬師さん、この度は受賞おめでとうございました!今回の宮城全共に臨むうえで、事前に受賞を予想されていましたか?

【薬師様】:発表の前日の夕方には出品される枝肉を下見しておりまして、その場で上位には入賞するとの確信を持っていました。

【インタビュアー】:自他共に認める最高の品質に育て上げられたのですね。全共への出品は、今回で何回目なのですか?

【薬師様】:父親の代から2回目の出品です(前回の長崎県大会では、7区 総合評価群 肉牛群で優等2席受賞)。今回も連続で、鹿児島県の代表に選ばれました。

【インタビュアー】:素牛は、どこから導入(子牛を購入)されているのですか?やはり(共進会用ではない)通常の肥育牛も好調なのでしょうか。

【薬師様】:通常の肥育素牛もすべて地元産です。通常の肥育では直近の一年間で、去勢牛28ヶ月齢の枝重540kg、上物率100%、A5等級が96%以上という成績でした。

こちらの畜舎で、日本一の鹿児島黒牛が肥育されました。

【インタビュアー】:素晴らしいですね。今回の宮城全共での受賞牛を、導入された時の牛自体の印象はどうだったのでしょう?

【薬師様】:県の候補牛は通常市場に出てくる9ヶ月齢ではなく6ヶ月齢です。全共用の素牛は、県内の選抜された肥育生産者のみが4~6頭に入札します。その中から数頭が県の代表となります。入札者が複数になると抽選になります。今回の受賞牛は1巡目、2巡目では入札がなかったのですが、私自身は注目していた牛だったので3巡目で落札しました。野球のドラフトに例えると、ドラフト時にあまり注目されていなかった選手が、後に名選手へと大成したという所でしょうか。3巡目で落札できたのは極めて幸運でした。

【インタビュアー】:注目されていなかった子牛が最優秀の受賞牛に育て上げられるなんて、実にドラマチックですね。いつ頃から、こちらの牛を代表牛として意識されていたのでしょうか。

【薬師様】:導入の4月から6ヶ月目の、10月くらいには「これはいける!」と感じたので、巡回に来る指導員にアピールしていました。

【インタビュアー】:かなり初期から頭角を現した子牛だったのですね。それではその時期まで、導入初期の飼養管理で最も気を使った点は何だったのですか?

【薬師様】:とにかく病気をさせないことが大事で、日頃から注意深く観察することでいち早く牛の健康状態を見極めるようにします。特に季節の変わり目などでは熱発・下痢に対して気を使います。

畜舎の中を拝見していると…そこにはなんと、 ビオスリーエースが積み上げられていました。

【インタビュアー】:予防的に、子牛の体調を整えることが重要なのですね。ビオスリーエースは、何年ぐらいお使いになっていますか?

【薬師様】:もう10年目になります。

【インタビュアー】:そんなに以前からご愛顧くださいまして、ありがとうございます。ビオスリーエースの使用を始めたきっかけについても教えていただけますか?

【薬師様】:元々は、別の生菌剤を2種類くらい試していました。しかしあまり効果の手応えが出てこなくて対応を考えていたところ、人づてにビオスリーが良いと聞いたので、子牛導入での使用を始めました。

【インタビュアー】:クチコミという事ですね。

【薬師様】:繁殖農家から素牛(約9ヵ月齢)導入後3~4ヶ月間くらいまでの時期にビオスリーエースを与えて腸内環境を整えるようにしたところ、これは成果が出ました。これが長期間愛用するようになったきっかけですね。

【インタビュアー】:導入後3~4ヶ月間くらいまでの時期に給与、というのはどのような目的意識があるのでしょうか。

【薬師様】:子牛育成期と肥育期とは180度、餌が異なります。その急激な餌の変化に子牛がスムーズに適応できるように、ビオスリーエースを与えます。肥育は、導入後1~2ヶ月間の下痢防止や餌の食いつきで勝負が決まります。この期間の内容こそ、全体の肥育成績を決める大きな割合を占めるのです。そこでしくじらない為に、ビオスリーエースを使用しており、改善効果を実感しています。

宮城全共優等賞1席 受賞牛の枝肉断面。 (全国和牛登録協会提供 撮影:帯広畜産大学 教授 口田圭吾)

【インタビュアー】:なるほど、場所としての環境が変わるだけでも子牛への大きなストレスだと思いますが、餌がそこまで大きく異なるため、腸内環境へのケアが必要になるのですね。ビオスリーエースの添加量は如何でしょう。

【薬師様】:導入時にビオスリーエースを多めに給与し、以降の2~3ヶ月間にわたって、少しずつ減らして与えています。

導入後1ヶ月   50~60g
導入後2~3ヶ月  40~50g
(1日、1頭あたりの分量。餌の上に振りかけて給与)

【インタビュアー】:他に使い方のポイント等はあるでしょうか。また、ビオスリーエースが特に優れている点などあるでしょうか。

【薬師様】:肥育のポイントとして、病気させないこと以外では熱発など健康に特別な異常がない平常時に如何によく食べさせるかが大きいです。 このような時にビオスリーエースを使用します。
餌の食いが落ちたときや糞便の状態を整えたいときに、随時100gを水に溶かして給与します。ビオスリーエースの嗜好性は非常に良く、喰いつきも良く、食べない牛はいません。

ビオスリーエースへの信頼を語ってくださいました。

【インタビュアー】:今回の受賞牛に対し何か特別、使用方法などを変えましたか?

【薬師様】:全共の素牛は、通常より3ヶ月早い6ヶ月齢で導入されます。また、出荷月齢も22ヶ月齢と6ヶ月ほど短縮される分、通常より早く餌を多く食い込ませなければなりません。そのため、6ヶ月齢で導入した牛に対しては通常より2ヶ月長く、5ヶ月の間ビオスリーエースを給与しています。

【インタビュアー】:ビオスリーエース以外には、添加剤等は使用しますか?

【薬師様】:たまに残餌に僅かに使用することはありますが、基本的にはビオスリーエースのみしか添加していません。

【インタビュアー】:最後に、次回2022年に開催される「第12回全国和牛能力共進会 鹿児島大会」に向けての意気込みを教えてください。

【薬師様】:鹿児島県全体、皆盛り上がっております。それだけ競争も激しくなると思われますが、5年後だけを目標にするのではなく通常の毎月毎日を大事に取り組んでいくことで、また辿りつけると信じています。肥育をやっている以上、次回大会への明確な目標を持ちつつ日々取り組んでいきます。

【インタビュアー】:決意が漲るお言葉ですね。全国の肥育従事者の方々にもご参考いただける貴重な内容のインタビューとなり感謝申し上げます。次回大会に向けても是非がんばってください。

左から、薬師様、東亜薬品工業の河野、井爪。


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