薬剤耐性(AMR: Antimicrobial resistance)対策とプロバイオティクス

 抗菌薬は人の医療分野だけではなく畜産業、水産業、農業などさまざまな分野で用いられています。動物に対しては動物用医薬品や飼料添加物として、動物の健康を維持し、良質な畜産物の安定供給のために必要なものとして使用されており、畜産業では感染症の治療だけではなく、一部では発育促進(AGP)の目的で飼料に添加して用いられてきました。

 しかし、抗菌薬の使いすぎなど不適切な使用により、抗菌薬が効かない薬剤耐性菌が増加し、この薬剤耐性菌による感染症が世界各国で増加しており、人や動物の医療に影響することが大きな問題となっています。2050年に人の医療分野では全世界でがんによって亡くなる方の人数よりも、薬剤耐性菌による感染症で治療ができずに亡くなる方の方が多くなる、という試算もされています。

このような状況を踏まえて、国際社会では2015年に「AMRグローバルアクションプラン(WHO)」が採択され、AMRに関しての取り組みが進められてきました。日本においても2016年に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン 2016-2020」が策定されています。
畜産分野においては、農林水産省から下記のように示されています。

畜産物生産における責任ある抗菌剤の慎重使用の基本的な考え方としては、
1.適切な飼養衛生管理による感染症予防
2.適切な病性の把握及び診断
3.抗菌剤の選択及び使用
4.関係者間の情報の共有
とされており、プロバイオティクスは、家畜の健康を維持することにより、抗菌剤の代替品の一つとして生産性の向上に寄与し、AMR対策に貢献できるものとして注目されているのです。
(家畜における健康維持、に関しては「畜産におけるプロバイオティクス」の記事をご参照ください。)


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